まずは年金の仕組みについて理解しましょう。公的年金制度の被保険者は以下のように分類されます。
第1号被保険者 | 自営業者等→国民年金のみ |
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第2号被保険者 | ①民間サラリーマン→国民年金+厚生年金 ②公務員等→国民年金+共済年金 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の被扶養配偶者(妻など) |
上図のように年金制度は3つの被保険者に分類され、国民年金を中心として3階建ての構造となっているため、受給額が大きく異なります。
たとえば夫が会社員で妻が専業主婦の場合は、妻は第3号被保険者になりますので、国民年金のみの加入となります。一方、夫は国民年金と厚生年金にも加入していますので、離婚後、それぞれの年金受給額に大きな格差が生じてしまうわけです。
そこで、年金格差を減らすために夫にだけ支払われていた厚生年金・共済年金を婚姻期間に応じて分割し、妻も受け取れるという制度が施行されました。この制度が年金分割制度です。原則、離婚した日の翌日から2年以内に請求しなければなりません。
よくある誤解としては、国民年金も含めたすべての年金を分割すると思われている方がいますが、そうではありません。分割の対象となる年金は厚生年金・共済年金などのいわゆる2階部分となります。
前述したように、年金分割の対象は厚生年金と共済年金ですので、夫が2階部分をもたない自営業者や自由業者の場合には、その妻は年金分割制度の対象外(年金の分割をしてもらえない)となります。
年金分割制度には、夫婦の合意によって厚生年金を分割できる「合意分割」と、合意がなくても年金事務所に申請することにより厚生年金の2分の1を自動的に分割できる「3号分割」があります。
合意分割
合意分割では、年金を分割する按分割合は一定の範囲で自由に決めることができます。上限は2分の1となり、下限は分割前の第2号改定者(年金の分割を受ける人)の対象期間標準報酬総額を分割前の当事者双方の対象期間標準報酬総額の合計額で割った値となります。分割対象となる期間は、原則として婚姻していた期間です。
例)
夫の対象期間標準報酬総額が7,000万円、妻の対象期間標準報酬総額が3,000万円の場合
3,000万÷(7,000万+3,000万)=0.3となり、按分割合は0.3~0.5(30%~50%)の範囲内で定めることになります。この按分割合の上限、下限は「年金分割のための情報通知書」に記載されています。
なお、婚姻期間中に第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)になっていた期間があった場合、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
3号分割
3号分割は国民年金の第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)の請求により厚生年金・共済年金の標準報酬額の半分が支払われる制度をいいます。合意分割とは違い、夫婦の話し合いの必要もなく、年金事務所に申請することによって2分の1を自動的に分割できます。分割対象となる期間は、平成20年(2008年)4月1日以降の婚姻していた期間のうち、第3号被保険者となっていた期間です。
合意分割 | 3号分割 | |
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制度の施行日 | 2007年4月1日 | 2008年4月1日 |
対象となる年金の種類 | 厚生年金または共済年金 | 厚生年金または共済年金 |
分割の対象 | 婚姻期間中の標準報酬 | 婚姻期間中のうち2008年4月から離婚するまでの期間で、一方が第3号被保険者期間中の相手方の標準報酬 |
分割の割合 | 当事者の合意または、裁判手続により定めた年金分割の割合 | 2分の1の割合 |
手続の請求 | 当事者の一方による請求 | 第3号被保険者による請求 |
請求の期限 | 離婚成立後2年以内 | |
受給資格 | 保険料納付期間が25年以上あること(通常の年金を受給できる条件と同様) ※今後10年に短縮される予定 |
①婚姻期間中の
②厚生年金(会社員等)か共済年金(公務員等)のうち
③合意分割の場合は2分の1以下、3号分割は2分の1を
④離婚後2年以内に請求し
⑤年金が受給される年齢になったときに、分割した金額が加算される
⑥そのためには自分自身、受給資格である保険料納付期間が25年以上という要件をクリアしている必要がある(※今後10年に短縮される予定)